グローバル化が進む中で「英語だけ」の対策で十分でしょうか?企業や自治体が持続的に成長していくためには、「多言語対応」の取組みが欠かせません。
本記事では、外国人雇用やインバウンド増加などの背景から、多言語対応が求められる理由と効果、具体的な対策方法について解説します。
はじめに:グローバル化の実態
外国人雇用の増加
厚生労働省のデータによると、令和5年10月末時点の外国人労働者数は2,048,675人で、前年と比較すると12.4%増加しています。また、「外国人雇用状況」の届出が義務化された平成19年以降、過去最高を更新しました。
外国人労働者を国籍別でみると、ベトナムが25.3%と最も多く、続いて中国(19.4%)、フィリピン(11.1%)が続きます。上位3カ国で全体の50%以上を占めており、アジア諸国からの労働者が多いことがわかります。
○ 国籍別の状況(P6)
労働者数が多い上位3か国 | |||
---|---|---|---|
・ベトナム | 518,364 人 | (全体の 25.3%) | 〔前年 462,384 人〕 |
・中国 | 397,918 人 | ( 同 19.4%) | 〔 同 385,848 人〕 |
・フィリピン | 226,846 人 | ( 同 11.1%) | 〔 同 206,050 人〕 |
対前年増加率が大きい主な3か国 | |||
・インドネシア | 121,507 人 | (前年比 56.0%増) | 〔前年 77,889 人〕 |
・ミャンマー | 71,188 人 | ( 同 49.9%増) | 〔 同 47,498 人〕 |
・ネパール | 145,587 人 | ( 同 23.2%増) | 〔 同 118,196 人〕 |
出典:「外国人雇用状況」の届出状況【概要版】(令和5年 10 月末時点)(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/11655000/001195785.pdf(2025年5月8日に利用)
インバウンド市場の急拡大
訪日外国人旅行者数はコロナ禍により一度は減少しましたが、収束後の2023年には大きく回復しており、2024年には約3,687万人と過去最高の訪日客数を記録しました。10年前の約1,340万人から3倍近く増加しており、インバウンド需要が長期的に拡大していることは明らかです。

また、国・地域別で見てみると、東アジア、東南アジアやインドで全体の8割を占めており、非英語圏からの訪日が非常に多いことがわかります。

多言語化が求められるケース
外国人材教育・研修資料の多言語化
日常会話では問題なく日本語や英語を話せる外国人材であっても、業務で求められる専門的な知識や技術を日本語や英語で完全に理解するのは容易ではありません。特に専門用語や業界特有の表現が多い場合、言語の壁が思わぬミスや誤解を招く原因となることがあります。
また、文化や価値観の違いから就業規則や社内ルールの解釈にずれが生じ、トラブルに発展してしまうケースも少なくありません。
こうしたリスクを防ぐためには、教育・研修資料や就業規則、社内ルールといった重要な社内文書を、外国人従業員の母国語で提供することが非常に有効です。正確な情報を、相手にとってわかりやすい形で届けることで、結果的に職場内のトラブル防止や定着率の向上にもつながります。
【事例】化粧品製造・販売会社:外国人従業員向けのトレーニング動画を多言語化
課題背景
エモーショナルに訴えかけられる、動画を制作したい。
4言語への翻訳後、字幕とナレーション挿入をしたい。
ソリューション
心に響くような動画を制作するために、翻訳時には一つ一つのセリフの長さや次のセリフが始まるまでのタイミングも考慮し、言い回しや言葉選びにも細心の注意を払いました。また、ナレーション収録前にはナレーターの声のサンプルをお客様へ複数提出した中から選択いただき、収録の際にはお客様と当社担当者が立ち会い、ご希望のイメージに沿えるよう進行しました。お客様には従業員の業務への理解度が上がったとご満足いただけました。
メニューやECサイトの多言語化
飲食店のメニューや自社ECサイトを多言語対応にすることで、これまで日本語話者に限られていたターゲット層を、外国人ユーザーにまで広げることが可能になります。特にECサイトの場合、訪日観光客だけでなく、海外在住のユーザーにも自社の商品やサービスをアピールできるため、国境を越えた販路拡大が期待できます。
【事例】病院:インバウンド医療に伴う、外国人患者向けドキュメントの多言語化
課題背景
観光客の増加に伴い外国人患者が増えているが、日本語が通じず診察がスムーズにいかないため、多言語のドキュメントを作りたい。
ソリューション
医療用語を適切に使用し、読み手である外国人患者に診察内容が正しく伝わるよう注意しました。また、すべての言語でネイティブチェックを実施し、日本人の看護師も理解できるよう日本語と訳文を併記して読みやすくレイアウトしました。このドキュメントのおかげでスムーズに外国人患者の診察ができるようになったとご好評いただいております。
製品マニュアルや販促資料の多言語化
自社製品を海外市場へ展開する際には、製品そのものだけでなく、付属するマニュアルや販促資料も現地の言語に対応させることが不可欠です。特に製品マニュアルについては、製品の使用手順や注意事項に誤解が生じると重大な事故やトラブルにつながる可能性があるため、内容の正確性が何よりも重要です。現地ユーザーが安心して製品を使えるように、信頼できる翻訳による多言語対応が求められます。
課題背景
金融システムを海外へも展開していきたいが、専門性の高いコンテンツのため内容を理解したうえで翻訳してほしい。
ソリューション
登録翻訳者6,000名を抱えるネットワークを生かし、専門性の高いマニュアルの多言語翻訳(インドネシア語・マレーシア語・ベトナム語・タイ語・トルコ語)に対応しました。翻訳からInDesignの編集作業までワンストップで依頼でき、スケジュール通りに海外事業が開始できたとのお声をいただきました。
多言語対応がもたらす効果
コミュニケーションの円滑化と業務効率の向上
多言語対応を導入することで、企業内外のコミュニケーションが格段に円滑になり、意思疎通の精度が向上します。これにより、異なる言語圏のパートナーや顧客とのやりとりで発生しがちな誤解やミスが大幅に削減され、業務プロセス全体の効率性が高まります。
ブランドの信頼性の向上
各国の言語で適切に情報発信をおこなうことで、ブランド自体の信頼性や権威性が強化されます。現地の文化や慣習に合わせたコンテンツ提供は、顧客に対して企業の信頼性を印象づけ、グローバルな視点から見ても権威ある存在として認知される効果をもたらします。
グローバル市場での競争優位性
現地の言語や文化に即したサービスの提供は、グローバル市場での競争優位性を確立するための重要な戦略となります。多言語対応により地域ごとのニーズに柔軟に対応できるため、新規市場の開拓や海外展開において他社との差別化が明確になり、グローバルなビジネス展開を強力にサポートします。
多言語対応の注意点
誤訳がないか
ユーザーがECサイトや販促資料などを見た際に致命的な誤訳などの問題があると信頼性やブランド価値の低下につながります。また、外国人材向けの教育・研修資料は業務手順にミスがあると致命的な事故やエラーが起きてしまうリスクもあるため、専門家への依頼や念入りなチェックが必要となります。
ターゲットが好むデザインやコンテンツ
国によって文化・宗教・慣習などが異なるため、日本語のコンテンツをそのまま文字通りに翻訳すると、誤った内容でユーザーに認識される可能性や、場合によっては誤解を生んでしまう可能性があります。
言語の変換だけでなく、ネイティブが見て自然なコンテンツの作成が重要です。
さいごに
このように、適切に多言語に対応することで様々なメリットを得ることができ、売り上げや事業拡大につながります。言語の課題や多言語対応の方法にお悩みの方は、世界90言語以上の翻訳に対応するサン・フレアの利用もぜひご検討ください。
翻訳会社サン・フレア
創業50年を超える国内最大規模の翻訳会社です。90言語以上の翻訳に対応しており、多言語案件は年間4,800件以上(2023年度)の実績がございます。外国人従業員向けの研修・教育資料から外国人向けの案内版、Webサービスなど様々な案件に応じた翻訳関連サービスを提供しておりますので、まずは一度お気軽にご相談ください。