既存の産業やビジネスと先進技術を組み合わせる「クロステック」(X-Tech)。金融分野のFinTechや教育分野のEdTech、広告分野のAdTechなど、これらのクロステック関連の取組みは革新的なビジネスモデルとして注目されています。
クロステック分野に取り組む企業の場合、その競争力の高さを生かして海外展開・グローバル展開を模索するケースも多いです。その際、こうした企業に限ったことではありませんが「言語の壁」が一つの大きな課題になります。どのように多言語対応を戦略的に進めるべきでしょうか。
この記事では、主にクロステックやSaaS、IT、ICT分野の取組みをおこなっている様々な企業や、多言語システム開発のプロジェクトを大手IT企業から受注している企業の担当者などに向けて、多言語対応において知っておくべき翻訳のポイントについて解説していきます。
グローバル展開における多言語対応の質の重要性
グローバル展開における多言語対応においては、日本での事業展開以上に、製品・ソフトウェアやサービスで使う言葉の選び方に配慮すべきです。
ネイティブ企業との競争になるため
日本企業が日本において日本語で製品・ソフトウェアやサービスを展開する際には、そもそも「言語の壁」というものはほとんど感じることなく事業を展開できます。
しかし、グローバル展開の際には、進出先国の言語を不自由なく使うネイティブ企業との顧客獲得競争になるため、言葉・単語の選び方の質、すなわち日本語からの翻訳の質にしっかりとこだわる必要があります。
日本企業だけでも8万社以上が海外拠点あり
進出先国の言語を不自由なく使うネイティブ企業として、すぐにイメージが沸くのが現地企業ですが、その国に進出してからの歴史が長いグローバル企業なども挙げられ、当然、その中には日系企業も含まれています。
外務省が公開している海外進出日系企業拠点数調査の最新版(2023年版)によれば、日本企業の海外支店や日本人が海外で起業した企業などの総数は、登録ベースでとなっており、グローバル展開の際にはこうした日本企業もライバルになる点は覚えておきましょう
進出先ランキング
ちなみに以下が日本企業の進出先ランキング(外務省の海外進出日系企業拠点数調査における2023年版の情報を基に作成)です。中国が31,060件で1位となっており、アメリカ(8,982件)、タイ(5,856件)と続きます。
1位:中国(31,060件)
2位:アメリカ(8,982件)
3位:タイ(5,856件)
4位:インド(4,957件)
5位:韓国(3,003件)
*外務省の海外進出日系企業拠点数調査の情報を基に作成
多言語対応・ローカライズの質が与える影響
多言語対応・ローカライズの質が製品・ソフトウェアやサービスに与える影響について説明します。
ユーザー体験の質
ユーザー側での操作や利用の際に誤解を招かないように、文脈を考慮した上で日本語の意図を翻訳先の言語で正確に再現するように翻訳することが、ユーザー体験の質を担保する上で大前提となります。
ただし、こうした「正確さ」だけでは不十分であり、「読みやすさ」や「違和感のなさ」も備えた文章に翻訳して初めて、UI/UX(ユーザーインターフェース/ユーザーエクスペリエンス)における言語面で、ユーザーから減点されることがなくなります。
現地市場での競争力、信頼
多言語対応の質はユーザー体験の質に直結しますが、もっと視点をマクロに広げて考えると、翻訳の質は現地市場での競争力や、そのソフトウェアやシステムの信頼性にも関わってきます。
「一事が万事」ということわざがあります。「1つの小さな事柄に現れる傾向は、すべての事柄にも現れる」といった意味です。翻訳の質の低さや誤りはその企業のイメージに少なからずダメージを与え、製品やソフトウェア、サービスそのものに対し、マイナスのイメージを持たれやすくなってしまいます。
「使ってもらえれば分かる」という考え方は必ずしも効果的ではありません。言語は「ユーザーが接する最初のUX」ともいえるほど重要で、そこでネガティブな印象を持たれると、その企業のソフトウェアなどを購入・利用してもらいにくくなり、現地市場での競争力を失っていきます。
IT・ICT・クロステック分野の多言語展開成功のポイント
最後に、IT分野やICT分野、クロステック分野での多言語開発の成功ポイントを4つ挙げます。
各国文化・法規制に対する理解
展開先国の文化・宗教・タブーを理解することは必須です。これらが直接的に製品・ソフトウェア・サービスの質に影響を与えることは決して多くはないものの、例えばマニュアル内の文章や人物画像においては、文化や宗教を意識した言語表現や服装などに気を遣う必要があります。
文化・宗教・タブーの理解のほか、法規制の観点でも注意が必要です。金融や環境、教育に関する法規制・ルールは各国・各地域によって少なからず違いがあり、日本語の文章を直訳しただけでは現地の法規制・ルールに反する内容となってしまうことがあります。
もっとも、法規制・ルールへの適合については翻訳だけではなく、製品やソフトウェア、サービスの内容を一部修正する必要が出てくることも少なくありません。
製品やマニュアルの用語の整合性
自社で展開する製品・サービス全体で用語の翻訳を統一することは、ユーザーが複数の製品・サービスを利用する際に非常に重要です。
こうした翻訳の統一や用語の整合性を確保するためには、製品・サービスの開発プロジェクトごとではなく、社内全体もしくは部署全体での共有を前提とした翻訳のスタイルガイドや用語集を作成・アップデートする必要があります。
翻訳後の定期的なUI/UX等の見直し
これらの課題に取り組んで、多言語展開において良いスタートを切ったとしても、ユーザーからのフィードバックなどを元に、適切にUI/UXなどの見直しをおこなうことも必要になります。
実際にフィードバックを待つのではなく、ユーザーへの定期的なヒアリングなどをおこない、企業側から積極的に改善すべき点を探っていくことが求められます。
専門知識を持つ翻訳会社・翻訳ベンダーを活用
そして最後に強調しておきたい点は、展開先の国・地域の文化・法規制に対する理解のために自社でゼロから知識を得ていくのには、多大な時間と労力が必要であるということです。翻訳用語の管理・更新に関しても、スタイルガイドや用語集の作成・修正・共有を適切なフローで取り組んでいくのは、容易ではありません。
そこで頼りになるのが、IT分野に精通した翻訳会社です。翻訳後の定期的なUI/UX等の見直しについては、各社が主体的にユーザーへのヒアリングなどをおこなう必要があるものの、そのほかの点で翻訳会社を利用する価値は大いにあります。
サン・フレアが多言語展開をサポート
50年以上の翻訳ノウハウを有している翻訳会社サン・フレアは、専門知識に基づいた対応や、製品やマニュアルの用語の統一で高い評価を受けていることはもちろん、短納期での対応や大規模プロジェクトの翻訳でも多くの実績を有しています。
また、多岐にわたる分野に対応しているため、クロステックのような複合分野にまたがる翻訳についても対応しております。
マニュアルやオンラインヘルプ、表示テキストUI、開発文書など、幅広く対応可能です。言語だけではなく、様々なソフトウェア言語やデータ形式にも対応できるローカリゼーションエンジニアも多数在籍していますので、多言語展開に向けた翻訳についてはサン・フレアにぜひお気軽にご相談ください。