[後編を始めるにあたって]
知財BUの顧問の石原です。
みなさん、前編はいかがでしたか。
お役に立つ蘊蓄はありましたか?
ワインを飲む機会があればぜひとも思い出してください。
第6章 ブルゴーニュ全体
今回はブルゴーニュです。
ブルゴーニュにはこんな言葉があります。
「半端な覚悟と財力で深入りするべからず」
「ブルオタ女子がハマるブルの沼」(ブルオタ:ブルゴーニュ・ヲタク)
ボトル1本5万円と聞いてビックリしているような財務状況ではお話にならないそうです(汗)。
なので、私は近づかないようにしています。
ブルゴーニュはパリの南東方向にある南北に延びる縦長の地域で、230 kmもの範囲でぶどう畑が連なっています(でも幅は1 km前後です)。
新幹線でなら東京駅から浜松駅の手前辺りまで、ずっとぶどう畑!地図はこの通りです。
ボルドーは赤ワインが主体ですが、ここブルゴーニュは白ワインが60%であり、残りが赤ワインとかロゼワインで、前者のぶどうはシャルドネで後者のぶどうはピノ・ノワールです。
畑ごとに、構成する土壌にバラエティがあり(これをテノワールと言います)、収穫年次(ヴィンテージ)によっても当たり外れが大きいようです。
すっごく高いワインなのに、飲んでみたらそれ程でもなかったなぁ、ってこともあるようです。
第7章は、コート・ド・ニュイ地区にあるロマネ・コンティについて蘊蓄を語ることにしますネ。
第7章 ロマネ・コンティ
コート・ド・ニュイ地区にある8つの村の一つに「ヴォーヌ・ロマネ村」(別名:神に愛される村)があります。この村には格付けトップのグラン・クリュの畑が6つあります。中央の「ロマネ・コンティ畑」の周囲に5つの畑があり、これらは「ブルゴーニュの輝く宝石」と呼ばれています。
ピノ・ノワールから造られる世界最高級品質の赤ワインを年間6,000本だけしか造らないロマネ・コンティの畑は180 m×100 mのホントに小さな畑なんですヨ。
東京から浜松まで続くブルゴーニュ、そこを代表するロマネ・コンティがこんな小さいなんてホントに驚きですネ!!
最高級のテノワール(土壌)から産されるこの赤ワインは1本250万円前後で取り引きされているそうです(汗)。
ここで、「偽ワイン通」の見分け方を伝授しましょう。
ヴォーヌ・ロマネ村の各グラン・クリュではピノ・ノワール(黒ぶどう)からの赤ワインしか造っていません。白ワインとかロゼワインとかは、そもそも絶対に存在しないんです。
そこで、「通」ぶっている人にこんな質問をしましょう。
「ロマネ・コンティって高級ワインがありますよネ!?それって赤と白ではどちらの方が高いんですか?」
この質問への答え方でその人の知識レベルがすぐに判りますネ(笑)。
第8章 シャンパーニュ(1)
乾杯の飲み物はビールかスパークリングワインですよネ!?
特に女性陣に人気のスパークリングワインですが、どういうものか案外知られていないんです。
シャンパンとスパークリングワインの違いもイマイチよく判らないですよネ!?
炭酸ガスでシュワシュワしているワインの総称がスパークリングワインであり、いろいろな産地でシュワシュワが造られていて、シャンパーニュ地方で造られているのがシャンパンです。世界3大スパークリングワインには、このシャンパンの他にスペインの「カバ」とイタリアの「プロセッコ」があります。
つまり、スパークリングワインが総称であって、その中の一つにシャンパンがあるんですヨ。
ホストクラブでのシャンパンタワーでドンペリが有名ですが、シャンパンの製法に貢献した盲目の修道士ドン・ペリニヨンさんが由来なんです!!
さて、このシュワシュワの造り方ですが、一番安直なのが、白ワインをソーダストリームにセットして炭酸ガスをプシューとする方法です。この方法は「炭酸ガス注入法」と呼ばれていて安いスパークリングワインはだいたいこれです😅
それに対して、シャンパンは「瓶内二次発酵」(トラディショナル方式)で造られます。高級スパークリングワインはすべてこの方法です。
まずは、白ぶどうを使って普通に白ワインを醸造します。糖分が酵母で分解されるとアルコールに変化すると共に炭酸ガスが発生しますが、開放槽なので炭酸ガスは空気中に拡散します。こうしてできた白ワインを瓶に詰め、そこに糖と酵母を追加で添加し、栓詰めした瓶内で二次発酵させます。密閉容器内での発酵なので炭酸ガスはワインの中に多量に溶け込むことになります。こうしてスパークリングワインができあがることになりますが、問題が一つあります。酵母の死骸が滓(おり)として瓶内でふわふわと浮遊しており、透明感がないんです。
この課題への対応を第9章以降で説明しましょう!
第9章 シャンパーニュ(2)
この女性は誰でしょう?
未亡人のクリコさんです。フランス語で未亡人は「ヴーヴ」
そう、ヴーヴ・クリコさんです。
この名前のシャンパンブランドは有名ですよネ!?
シャンパン醸造所の二代目に嫁いだクリコさんですが、27才の時にご主人が赤ちゃんを残して他界してしまいます。フランス革命の直後で、貴族たちもシャンパンどころではなくなっていて、各醸造所は倒産の危機を迎えていました。クリコ未亡人はどうしたでしょう?
彼女はシャンパンの歴史に大きな3つの功績を残したスーパーレディーなんですヨ!
[その1]
没落した自国の貴族たちに見切りをつけ、ロシアへ営業訪問してロシア貴族への販路を急拡大し、シャンパンの灯が消えるのを阻止した。
[その2]
動瓶作業のためのピュピトルを発明した。(➡写真参照)
[その3]
シャンパンの瓶口のキャップ方法を発明した。
今日は、[その2]を解説しましょう。
このたくさんの穴が空いた木製治具をピュピートルと言います。かわいい名称ですネ。
役割を終えた酵母の死骸「滓」を除去する工程に使われるものです。ふわふわと瓶内に漂っている滓を瓶口部分に集めるため、このピュピトルにボトルの首を差し込み、45度~90度ずつボトルを回します。最初は水平に挿し込まれたボトルを回転ごとに垂直に近づけるよう角度を上にしていきます。角度を上げるのは滓を下に落とすため、回転はボトル側面のあちこちにたまっている滓を満遍なく下に落としていくためです。ボトルは平均1カ月半という長い時間をかけ、1本あたり25回ほどの回転&角度上げの作業が実施されます。動瓶士と呼ばれるこの作業者は、大量のボトルを相手に約2カ月間もひたすらこんな単純作業を行います。腱鞘炎にならないのかな!?(笑)
こうして、滓が集められた瓶口を冷凍液[マイナス27℃の塩化カルシウム水溶液]に浸して急速冷凍し、その時点でキャップを開栓すると、冷凍された滓の部分がガス内圧により吹き飛ばされ、透明なシャンパンとなります。この作業はデゴルジュマンと呼ばれております。
その後、[その3]で説明する方法でキャップされてシャンパンが完成するんです。
では、続きは最終章のお楽しみに。
最終章 シャンパーニュ(3)
クリコ未亡人の3つ目の功績はミュズレの発明です。
スパークリングワイン独特のもっこり形状のコルク栓の頭にかぶせる王冠(先端の金属製の皿で、キャプシュルと呼ばれる)と針がね金具を合わせてミュズレ[猿ぐつわのこと]と言います。
今回でワイン蘊蓄講座は最終回なので、シャンパンに関するとっておきの蘊蓄をプレゼントしましょう!
- シャンパンはこのミュズレを隠すように金属ホイールがかぶせられています。これはキャップシールと呼ばれています。
このキャップシールには隠れた目的があるんです。冷凍滓を吹き飛ばす工程(デゴルジュマン)を説明しましたが、その吹き飛ぶ量はボトルごとにまちまちなので、最終製品の液面もバラバラになります。 この不公平感を隠すことがキャップシールの本当の役割なんですヨ! - シャンパン用グラスですが、大きくこの2種類に分かれます。
後者の平べったい方はソーサー型グラスと呼ばれ、宮中晩餐会での乾杯で使用されています。前者に比べて、アゴをあまり上げなくてもシャンパンを飲むことができます。高貴なおばさまたちは首の皺を向かいの殿方に見られることなく乾杯ができるからだそうです。
以上、前後編でお送りしたワイン講座の終了です。
楽しんでもらえたならうれしいです。
この記事を書いた人
石原 幹也
積水化学工業株式会社で30年強、知的財産業務に従事。
現在はサン・フレアの顧問として新規顧客開拓活動をおこない、企業知財活動についてのセミナーも不定期に開催しています。
最近は、多くのシニア世代と同様に、朝の出勤から解放されてライブにてドジャースの大谷翔平選手の活躍を応援しています。
みなさん、ポストシーズンごとに行われる大谷選手のシャンパンファイトを観ながら、シャンパンの蘊蓄を思い出してくださいネ!