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プライム市場における英文開示拡充の意義とは?

目次

  1. 東証による発表内容
  2. 英文開示に関する指針・義務化
  3. 英文開示の拡充メリットと影響
  4. 英文開示の状況

東京証券取引所はプライム市場の上場会社に対し、2025年4月から「決算情報および適時開示情報」の英文開示を義務付けることを発表したことから、IR資料の英文開示の重要性が一層高まっています。対応の遅れは海外の投資家からの評価に影響する要因となり得るため、よく理解して対応する必要があります。

この記事では英文開示拡充の解説と共に、その意義についても触れていきます。

東証による発表内容

東証が英文開示の義務付けについて発表したのは、2024年2月です。その1年ほど前の2023年3月に、東証は「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」について発表しています。プライム市場およびスタンダード市場の全上場会社に対し、自社の資本コストや資本収益性の改善に向け、目標や計画期間、具体的な取組み内容を策定し、投資家向けに開示するよう要請するものでした。

投資家や株主との信頼構築の実現や、企業の持続的な成長と企業価値の向上に向けたものであり、この時点では英文開示の義務化までは行わないものの、積極的な実施を上場企業に要請していました。

資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について|東京証券取引所

企業価値の向上などに向けて東証が積極的に動く中、2024年2月には「プライム市場における英文開示の拡充に向けた上場制度の整備について」を公表しました。決算情報や適時開示情報について、日本語と同時に英文開示を2025年4月から義務化するという内容です。

上場企業の株主の約3割を占める海外投資家と継続的かつ効果的な対話を実現する上でのスタートラインとして、英文開示は非常に重要な取組みであると言えます。以降、詳しく説明していきます。

プライム市場における英文開示の拡充に向けた上場制度の整備の概要|東京証券取引所

英文開示に関する指針・義務化

英文開示に関する指針・義務化の具体的な内容を説明していきましょう。まず前提として、義務化されるのはプライム市場の上場企業です。

義務化の範囲・タイミング

英文開示義務化の項目として挙げられているのは投資判断に重要な決算情報や適時開示情報で、このうち決算情報で想定される資料としては、決算短信や四半期決算短信、決算補足説明資料が挙げられています。

英文開示のタイミングは「日本語と同時」とされていますが、開示が急遽必要になる場合や、日本語の開示内容が直前まで定まらない場合であって日本語による開示の遅延が生じるときは日本語での開示を優先し、同時としないことも可とされています。

出典:東京証券取引所

開示の度合い

開示の度合いについては、全文を日英同時に開示するのが望ましいとしたうえで、英文開示は日本語の開示の参考訳と位置づけ、日本語における開示内容の一部または概要を英語により開示することでも可とされています。
そのため、決算短信のサマリー情報のみを英文開示する場合も、規則違反にはなりません。

改正規則の適用時期

英文開示の義務化に伴う上場制度の改正規則の適応時期は、2025年4月とされています。ただし、英文開示の体制整備には一定の時間を要することが想定されるため、所定の手続きを経れば1年間の猶予が与えられる形となっています。

英文開示未実施等の規則違反への措置

英文開示を実施しない場合について、東京証券取引所は「その内容や経緯・原因等に応じて、公表措置等の対象となる場合があります」としています。

具体的には、開示が急遽必要になるケースや、英文開示を同時に行うために日本語での開示に遅延が生じるケースは、規則違反に相当しないとしています。つまり、これに該当しない場合は上場企業名が公表される恐れが出てきます。

英文開示の拡充メリットと影響

プライム市場の上場企業に対して、英文開示が制度化・義務化され、企業側にとっては上場を続けるためのコストが増大したように感じるでしょう。しかし、英文開示は多くのメリットもあるため、積極的に取り組んでいくことが大切です。

整理すると、英文開示のメリットは主に3つ挙げられます。IR担当であれば既知であるとは思いますが、英文開示に取り組むことで生じるプラスの効果と影響を説明していきます。

株主・投資家に対する透明性の向上

英文開示によって経営方針や決算情報に関する海外投資家への透明性が増せば、海外のステークホルダーからの信頼性が増すほか、投資先の選択肢に含まれやすくなるといったメリットがあります。

日本人であれば、日本語で情報を調べられない米国企業に投資することには一定の不安を感じます。日本語の情報であれば日本人に理解しやすいように、英語圏の投資家も日本企業に関する英語での情報を求めています。こうした基本的な性質に立ち返ることが重要です。

顧客資産を運用する海外の資産運用会社にとっては、英語での情報発信が多い日本の企業であれば投資先に選びやすくなります。こうした企業は顧客に対して投資先選定に関する説明責任を負っていることを、今一度再認識すべきであると言えます。

株主総会での賛成票増加

英文開示によって海外のステークホルダーからの信頼度が高まれば、投資判断に対する海外投資家の確信度が向上し、株主総会で会社提案議案への賛成票を得やすくなるというメリットがあります。

英文開示の拡充などによって大多数の株主から企業の経営方針や戦略への賛同が得られている状況を維持しておくことは、海外のアクティビスト(※いわゆる「モノ言う株主」)が議決権の行使によって敵対的な要求をしてくることへの備えにもなります。

資本コストの改善と株価への影響

決算情報や適時開示項目が海外投資家にタイムリーに届かなければ、会社と海外投資家の間で情報の非対称性が生じ、経営に対する不安が高まることで資本コストの上昇要因となる可能性もあります。

ちなみに資本コストとは、企業側の立場から説明すれば「企業の資金調達に伴うコスト」のことであり、経営に対する不安要素が高まると、例えば高い配当金を払わなければ投資に見合わないと見なされるといったことを招き、株価下落を防ぐために資本コストの上昇を余儀なくされます。

一方、透明性が高まれば株価上昇の可能性が高まり、資本コストの改善につながりやすくなります。

英文開示の状況

東京証券取引所によれば、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」について開示済みの企業の中においては、2023年12月末時点で47%の企業が英文開示を実施しています。

このことは、中長期的な企業価値向上に前向きな企業は、英文開示にも積極的であるということを示しています。

出典:東京証券取引所
注:2023年12月末時点で直近に提出されているコーポレートガバナンス報告書において、所定のキーワードを記載している会社を集計

サン・フレアが英文開示をサポート

投資家が経営方針や財務情報に関する透明性を重視するという点は、日本人投資家であっても海外投資家であっても同様です。そのため、英文開示の対象範囲をできるだけ広く設定することはもちろん、当然、日本語から英語への翻訳の正確性や迅速な開示が求められます。

サン・フレアは上場企業のIR資料の翻訳で多数の実績があり、スピーディーな開示に向けて短納期での翻訳対応も可能です。英文としての読みやすさも重視し、「伝わる」英語を考慮して翻訳することも可能です。

IR資料の英文開示に取り組まれる際には、サン・フレアまでお問い合わせください。

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概要
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目次
1.ESGメッセージを取り巻く状況
2.海外投資家がESGメッセージを好む理由
3.ESGメッセージを取り入れるためのガイドライン
4.ESGメッセージの英文開示
5.当社ならではのESG翻訳

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