近年、企業のガバナンスに関する騒動が波紋を広げるケースが少なくありません。2023年も物言う株主の存在や買収防衛策の導入を巡る動きに注目が集まりました。本記事ではガバナンスの重要性とともに、ガバナンス情報に関する英文開示をおこなう必要性についても解説します。
ガバナンスとは
そもそも「ガバナンス」とはどういう意味なのでしょうか。
ガバナンスの意味
ビジネスシーンで「ガバナンス」(Governance)というワードが使われる場合、「コーポレートガバナンス」(Corporate Governance)を意味し、日本語では「企業統治」と訳されます。これは、組織における不正行為を未然に防ぎ、健全な企業経営を担保する仕組みのことを意味します。シンプルに説明すると「企業が健全な経営をおこなうための企業自身による管理体制」のことを指します。
ガバナンスの重要性
経営者による独裁的な経営や法令違反、情報漏洩といった企業の不祥事を防ぐためには、そのための体制をしっかりと構築しておくことが何より重要です。
コーポレートガバナンスは、まさにこのような防止体制として機能するものであり、企業のステークホルダー(利害関係者)である株主との信頼関係を深めるためにも、必要不可欠なものであると言えます。
「企業統治」という訳語が招く勘違い
前述の通り、コーポレートガバナンスは日本語で企業統治と訳されますが、この訳がガバナンスの意味に関する誤解を生んでいる側面があります。企業統治と聞くと「従業員に対する支配」といったイメージが連想されますが、あくまで健全な経営のための管理体制のことを指します。
「コンプライアンス」との違いは?
ガバナンスと混同しがちなワードとして「コンプライアンス」(Compliance)があります。日本語では「法令遵守」と訳され、ガバナンスはこうした法令や規則の順守を担保する体制としての意味があります。
近年ガバナンスに関する騒動が目立つ
昨今、企業のガバナンスに関する問題が大きく報じられるケースが目立ちつつあります。創業家の経営者による私的な企業財産の流用や不透明な取引の実態などが明らかになり、株主総会が紛糾する事態に発展することも少なくありません。
その企業のガバナンスリスクが露呈したことで企業ブランドに傷が付き、事業にも株価にも悪影響が出やすくなります。
こうしたガバナンスに関する問題が表面化した場合、第三者委員会の設置などによって調査をおこない、ガバナンスを正常に機能させることが必要となります。
詳しくは後述しますが、ガバナンスに対するステークホルダーからの監視の目は世界的に厳しくなっており、社内でガバナンスを強化した上で、管理体制に関する情報を開示する必要性も高まっています。このような流れの中で、株主サイドからは財務情報のみならず、コーポレートガバナンス体制やその他の非財務情報の開示が必要との声が高まっています。
コーポレートガバナンス・コードの導入
2015年に金融庁と東京証券取引所が共同で「コーポレートガバナンス・コード原案」を公表し、その後、この原案を基とする「コーポレートガバナンス・コード」が制定されました。これは、上場企業がおこなうコーポレートガバナンスにおいて、ガイドラインとして参照すべき原則・指針を示したものです。詳しくは下記リンクをご参照ください。
コーポレートガバナンス・コード|東京証券取引所
企業評価・ブランド価値の向上
企業経営の健全性が保たれれば、当然、企業に対する評価やブランド価値の向上につながります。株主や顧客からの信用度が増し、事業展開の基盤はより強固なものになります。社会的信用が増せば、金融機関および資本市場からの資金調達の難易度も下がります。
近年はFacebookやXなどのSNSの普及により、各社の企業活動に対する監視の目が厳しくなっており、不祥事を起こした際には、企業の事業展開や株価等に重大な影響が生じることとなります。こうした背景もあり、コーポレートガバナンス強化の重要性が更に増しています。
ESGへの対応
「ESG」に配慮した経営が求められるようになってきているのは、世界的な流れです。
ESGとは「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の頭文字をつなげたワードで、ESGは投資家が企業の長期的な存続を評価するための指標として注目されるようになりました。ESGの「G」はまさに本記事で説明してきたガバナンスのことです。
近年は機関投資家や個人投資家の間で「ESG投資」という考え方が浸透してきました。投資判断に際してESGの観点を組み入れるという考え方の中で、ガバナンスは企業が機関投資家などからの投資を呼び込む上でも重要なファクターの一つとなっているわけです。
世界的な「非財務情報」の英文開示の流れ
企業が開示する情報としては決算情報などの財務情報がイメージとして思い浮かびやすいですが、ESGなどに関する社会意識の高まりとともに、「非財務情報」の開示も求められつつあります。「非財務情報」とは、企業の経営理念や中長期の経営戦略、経営課題、コーポレートガバナンス体制、ESG情報などの財務以外の情報を指します。
こうした流れは世界的なものであり、上場企業が海外の投資家に対する開示責任を果たす上でも、英文で非財務情報の開示をおこなうことが必要となっています。
非財務情報の翻訳・英文作成はサン・フレアへ
財務情報の英文開示と比較すると、定性的な非財務情報の英文開示は日本企業にとって難易度が非常に高いのが現状です。財務諸表などに関する財務情報の場合は定型的なフォーマットを活用しやすい側面がありますが、企業独自の特徴が反映される非財務情報に関してはそうした側面は当てはまりません。
このように非財務情報の英文開示の重要性が高まっている中で、誤訳等のリスクを排除することは必須です。社内で非財務情報の翻訳を完結しようとすると、そういったリスクが高まり、高い翻訳の品質確保が困難となることが多々あります。
サン・フレアでは上場企業やグローバル企業から依頼された非財務情報の英文翻訳で豊富な実績があり、高品質な翻訳サービスを提供しています。非財務情報の英文翻訳の委託先を検討している際は、ぜひ当社までお問い合わせください。