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ゲーム翻訳の世界共通の課題「文字数制限」を紐解く

目次

  1. そもそも日本語にはこんな特徴がある
  2. ローカライズ時に起こりうる問題とは?
  3. 翻訳時に「文字数制限」に対する意識はなぜ大切?
  4. ローカライズ時の文字数制限に対する工夫とは?

上質なゲームローカライズは、ゲームを世界展開するうえで重要な役割を果たします。翻訳の質はもちろん、対象国でNGとなっている表現はないか、ローカライズ後もゲームの世界観が保たれているかなど、そのクオリティを上げるために押さえておくべきポイントは多岐にわたります。今回の記事では、UIのような文字数制限がある場合の翻訳に注目し、ローカライズ時に生じる可能性のある問題から、開発時・翻訳時にできる工夫などについて掘り下げます。

そもそも日本語にはこんな特徴がある

日本語は、英語やヨーロッパ言語などと比べて、少ない文字で多くの情報を伝達できるという特徴があります。それは、日本語が漢字・ひらがな・カタカナを組み合わせて文字を表記する言語であり、主に漢字がそれ自体で意味を説明できる内容が多いためです。

また、他の特徴として、主語を省いても文章が成り立つことも挙げられます。
(例)
・空腹だ。
・遊びに行こうか。
・面白かったね。

上記の日本語は「誰が・何が」という主語が入っていません。しかしすべて日常的に使われる表現であり、日本語として成立しています。このように主語を省いて表現できる分、他の言語と比べて文章を短くしやすいといえるでしょう。

ローカライズ時に起こりうる問題とは?

上記のように、日本語の文字数における情報伝達の効率のよさに対して、日本語以外の言語、特にヨーロッパの言語ではより文字数が多く、文章が長くなる傾向があります。対して、中国語は日本語よりもさらに少ない文字数で、同じ意味を表現できるといわれています。

※以下、例文の翻訳には翻訳ツール(DeepL)を使用
(例1)
招待する
邀请朋友(簡体中国語)
Invite Friends(英語)
Freunde einladen(ドイツ語)
Invita a tus amigos(スペイン語)

(例2)
期間限定
限时(簡体中国語)
Limited time(英語)
Begrenzte Zeit(ドイツ語)
Tiempo limitado(スペイン語)
並べてみると、ドイツ語やスペイン語は日本語と比べて文字数が多くなっていることがわかります。

ゲーム開発においては、文字数制限は主にバイト数で管理します。バイト数で表現(Unicode以外)すると、日本語は全角1文字が2バイト、英語やヨーロッパの言語は半角1文字が1バイトとなります。上記の例文を使用して、日本語のバイト数の比率を1とした場合の他の言語との比較は以下のようになります。

(例1)「招待する」の場合

言語

文章・訳文

バイト数

バイト数比率(膨張率)

日本語

招待する

8

1

簡体中国語

邀请朋友

8

1

英語

Invite Friends

14(含スペース)

1.8

ドイツ語

Freunde einladen

16(含スペース)

2

スペイン語

Invita a tus amigos

19(含スペース)

2.4

(例2)「期間限定」の場合

言語

文章・訳文

バイト数

バイト数比率(膨張率)

日本語

期間限定

8

1

簡体中国語

限时

4

0.5

英語

Limited time

12(含スペース)

1.5

ドイツ語

Begrenzte Zeit

14(含スペース)

1.8

スペイン語

Tiempo limitado

15(含スペース)

1.9

このように、日本語から他の言語に訳すと膨張率が高く、文章が長くなることが多いため、UIなどの翻訳時に元の日本語の文字数に合わせようとするとかなりの労力を要します。それでも表示範囲内に収まりきらない場合は文章が切れたり、改行の位置が不自然になったりと、違和感のある訳につながってしまうのです。

翻訳時に「文字数制限」に対する意識はなぜ大切?

ではなぜ、ゲームのローカライズ時に文字数制限や文章の長さを意識すべきなのでしょうか。ここではその理由について解説します。

ユーザーが自然にゲームをプレイできないから

翻訳やカルチャライズも含め、どんなにクオリティの高いローカライズをおこなったとしても、テキストの表示に違和感があれば、ユーザーはその作品の世界観に没頭することができません。また、オリジナルの作品が素晴らしいものだとしても、そもそもゲーム内のテキストを正しく読むことができなければ、その魅力を伝えることも難しくなってしまうでしょう。ユーザーがより自然にタイトルをプレイできるようにするためにも、翻訳部分のみでなく、テキスト表示に関しても細心の注意を払う必要があります。

UIなど表示範囲が限られている部分は特に注意が必要

例として「戦闘開始」や「達成報酬」といったように日本語のUIは、単独の単語のみで表記されるケースがよく見られ、表示範囲が短いものが多い傾向にあります。しかしUIの表示は、タイトルの信頼度を左右する内容であるため、翻訳時は特に文字数制限に注意が必要です。その理由として、翻訳の内容がオリジナルと合っていたとしても、UIの表示が適切でなければ、対象国での展開を軽んじているのでは、と誤解される可能性があることが挙げられます。さらにUIは、タイトルを快適にプレイできるかどうかというユーザーの感触に直結します。プレイ感覚は作品の良さを伝える根幹部分となるため、高い翻訳精度が求められるのです。UIを含め、表示範囲が限られている部分の翻訳に関しては、短くてもターゲットの言語で正確に伝わるような工夫が必要となることも考慮しておくべきでしょう。

ローカライズ時の文字数制限に対する工夫とは?

作品の海外展開のためにゲームローカライズをおこなうにあたり、実際に文字数制限に対してどのような工夫ができるのでしょうか。その内容についても見ていきましょう。

開発時にあらかじめ表示範囲を広げておく

上記にもあるように、日本語は短い文字数で多くのことを説明できる傾向にあります。そのため翻訳後の言語での表示を想定し、開発時にあらかじめ表示範囲を広げておくことも1つの方法です。どのくらいまでスペースを広げておけばよいかが分からない場合は、基準として、英語を目安にしておくのもよいでしょう。例として、日本語の10文字=20バイトに相当する情報を英語で表すと約25~30バイトとなるため、日本語1文字あたりの情報量に対し、約1.25~1.5倍の文字数を必要とする計算となります。ただし、原文が短ければ膨張率も上がる傾向にあるため、数字はあくまで目安として捉えておきましょう。

このように開発時にあらかじめ翻訳後の文字数を考慮しておくと、スムーズなローカライズの進行につながります。

翻訳時にできる工夫

ゲームを多言語に翻訳する場合、言語によって必要となる文字数が異なります。ここまででも分かるように、特にヨーロッパ言語への翻訳は、翻訳後の文字数が大幅に増える場合もあるため、文字数制限やLQAの有無などを把握したうえでの対応が必要となります。ここでは実際の事例を挙げ、ローカライズ時にできる具体的な工夫や対処の方法をご紹介します。

サン・フレアの事例~シミュレーションRPGゲームアプリの多言語ローカライズ

例として、サン・フレアが過去に受託した、シミュレーションRPGの多言語ローカライズにおける、文字数制限への工夫について取り上げます

このプロジェクトでは、短い期間で大量のインゲームテキストを日本語から8言語(英語・簡体字・繁体字・韓国語・フランス語・イタリア語・ドイツ語・スペイン語)に翻訳し、LQAまで実施しました。
オリジナルアニメが題材のタイトルで原作に複雑なストーリー性があるため、ストーリー・相関図の深い理解を必要とし、セリフなどはキャラクターの特長を捉えつつも、表示される文字数制限も意識して翻訳することが求められるという非常に難易度の高いものでした。

文字数制限については、特にテキストが長くなりがちなヨーロッパ言語が多く、工夫が必要でした。そこで、各言語の文字数制限に関するマクロを作成するなどし、翻訳者に文字数を意識してもらいながら翻訳を実施しました。
翻訳の段階から文字数制限の対策をおこなうことで、LQAまで効率的に進めることができました。

ゲームローカライズはサン・フレアへ

世界各国でゲームの需要が高まる昨今、ゲームの多言語化は多くのユーザーに作品を届けるための要となります。タイトルを様々な言語にローカライズする際は、文字数制限への対応を含めて、豊富な知識や状況に応じた効率的な管理・進行を必要とします。サン・フレアは、多数のゲームローカライズの実績があり、多言語翻訳においてもオリジナルの魅力をそのまま伝えるノウハウがあります。対応言語は90以上あり、技術文書やWebサイト、動画などのプロモーションツールといった幅広い分野の翻訳に対応しています。ゲームのローカライズは、ぜひサン・フレアにお任せください。

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ゲーム業界向けソリューションのケーススタディ

概要
ゲーム業界向けに提供したソリューションを、ご利用いただいたお客様のインタビュー付き事例として複数社ご紹介いたします。
目次
1.戦国時代を舞台としたゲームをローカライズ
2.謎解き絵本アプリを3言語にローカライズ
3.ゲームプログラミングのソフトをローカライズ

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