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【後編】「風車であふれる前」が勝負!育成事業への思い FOMアカデミーを取材

目次

  1. 事業を通して感じた海外とのギャップ
  2. 海外から視察に来られる際の目的や見学先は?
  3. 施設を増やす条件と福島のいま
  4. 技術力を磨いて息の長い産業に
  5. 風力発電におけるO&M事業のこれからに注目

前編では、FOMアカデミー創設までのストーリーを中心に、創設の中心メンバーの一人である菅野辰典さんにお話をお聞きしました。後編では、事業を通じて感じた日本と海外のギャップや、今後の展望や思いについて、インタビューした内容をお届けします。

事業を通して感じた海外とのギャップ

サン・フレア

事業を通じて海外の方とコミュニケーションをとられる中で、文化的なギャッなプや、言語でお困りのことなどはありますか。

菅野さん

日本語を会議翻訳ツールで英語に翻訳すると、くどい感じになってしまいます。あと日本語は主語がないので、主語や目的語が絡んでくる「誰が誰に」などの翻訳のときには、ツールがよく間違えますね。そこでAI学習機能を持っている翻訳アプリを導入しています。回数をこなすことで違和感は減ってきています。

あとは、文化的な一番のギャップは「個か集団か」の違いが、仕事に関してかなり大きいと感じます。

風力発電の産業において、海外のエンジニアは基本的にみんなフリーランスなんです。トレーニングを受けるのは個人だし、そのトレーニングを受けた自分の付加価値を売るのも自分。日本にはその文化が全くない。それが大きなギャップです。

例えば、GWOベーシックセーフティトレーニングの費用は258,000円(税抜)なんですけど、日本では高いと言われます。「日本の技能講習は普通7〜80,000円」「なぜ安全の講習で250,000円も払わなければいけないのか」といった感じです。

でも海外の方は違うんです。自分の報酬を上げるためにトレーニングを受けるから、トレーニング費用を払うことは「投資」であり、「リターン」があれば決して高いと思わない。こうした金銭感覚や価値観のギャップが日本と海外ではあると、いつも思います。

会社で従業員に資格を取らせることは、日本では当たり前ですよね。講習会もお給料を払いながら行かせますし。ただ「会社からの指示で来ました」という方は、トレーニング内容が身につかないことが多い印象ですね。

海外から視察に来られる際の目的や見学先は?

サン・フレア

海外からの視察のお客様などは、どういう目的で来られることが多いんでしょうか。

菅野さん

何かのイベントに合わせて、大使館や県がコーディネートすることが多いです。ただ展示会のブースに来てもらうだけではなく、福島の取り組みをぜひ見てもらいましょうということで、例えばですが、水素ステーションや水素製造工場、スマートコミュニティをやっているエリアが浪江にあるので、FOMアカデミーも見にいきましょう、といった感じでツアーを組むわけです。

海外からも多くのお客様が見学に

ただ、海外の方からすると、施設を見てもらっても特に大きな反応はないんですよね。日本では珍しいけど、海外では当たり前のことなんです。逆にここが小学校だったことにびっくりされます。なんでこんなに綺麗なんだとか、そういう感想をいただくことが多いです。
(※FOMアカデミーは以前小学校だった施設を使っている)

サン・フレア

視察後にビジネスつながったことはありましたか。

菅野さん

トレーニングに関して、という部分でのお話はあまりありませんが、地元の風力産業に関わりたいというFOMの会員企業と海外の企業がコラボレーションするとか、そういう話はいくつかありますね。また日本国内の方では、ウインドジャーナルや日経新聞の記事を読んで、見学をしたいという方もいらっしゃいます。

施設を増やす条件と福島のいま

サン・フレア

日本の他の地域でもっとトレーニングセンターを増やして、いろんな地域で受けられるようにしようとした時に、適した地域の条件はありますか。

菅野さん

条件は“風車のいっぱいあるところ”です。応援してお金を出してくれる企業が多いところではないと、トレーニングセンターはビジネスとして成り立ちません。だから風車がたくさんあるということが大事です。

技術力を磨いて息の長い産業に

サン・フレア

最後に、今後の展望やFOMアカデミー様の思いを聞かせてください。

菅野さん

ローカルでメンテナンスできる会社があれば、絶対使う、とオーナーやメーカーは必ず言います。風力発電所のメンテナンスが難しいということを知っているからです。

風車のメンテナンスは電気も機械も油圧も全部少人数でやるので、一人当たりの能力要求が高いです。だからこそヨーロッパではメンテナンスを担当する人材のコストは高くなっていますし、日本もそうあるべきだし、実際にそうなっていくと思います。

施設内にはメンテナンスにかかわる様々な器具・用具が展示されている

福島にはまだ風車があまり建っていないためイメージが沸かないところがあるかもしれませんが、今から風力産業の仕事を受ける側の技術を磨いていけば、将来的に海岸に洋上風車があふれるフェーズになった時に、必ずそれが実を結んで息の長い仕事になっていくと思います。

このような背景から、私としては、なるべく現場でしか学べないことできるだけ減らして、トレーニングで能力を高められることが大事だと思っています。 
FOMのようなトレーニングセンターでベーシックとアドバンスの積み上げをちゃんとして、その上で仕事に出て、またトレーニングして仕事に出てスキルアップしていくのが一番良い形だと考えています。

FOMアカデミーとしては、GWOは学校教育で言う「学習指導要領」みたいなものだと思っています。「この学年ではこれを教えてください」「これだけは最低限覚えさせてください」というような。でも、風車のメンテナンスを行う技術者になるには、座学だけではなく技術トレーニングが必要です。

現場をずっと経験して、メーカー側・オーナー側双方でのノウハウを持った人材がいて、技術がわかる人が、本当の意味で技術をちゃんと教えられる、それを実現できるのは多分ここしかないと思っています。
全国各地に、ベーシックのトレーニングセンターが増えれば、入り口は増えます。その上で、よりレベルアップしたいと思った時には、FOMアカデミーに来れば良い、そうなるのが理想です。

風力発電におけるO&M事業のこれからに注目

ここまで、FOMアカデミー様へのインタビュー記事を、前編・後編の2部構成でお届けしました。

サン・フレアではFOMアカデミー主催のセミナーを受講するなど、洋上風力業界の知識や最新情報を常にアップデートしていますが、今回、福島県のFOMアカデミーの菅野さんからお話をお聞きし、改めて洋上風力発電マーケットの潜在性の高さを感じました。
今後も福島県とFOMアカデミー様の活動にぜひご注目下さい。

FOMは今後も業界の発展に貢献するトレーニングを提供していく予定です。VRを活用した体験ツアーやトレーニングの準備も始めています。
Webサイトもぜひご覧ください。

【FOMアカデミー本部】
住所:〒960-0271 福島県福島市飯坂町茂庭遠西96-1
公式サイト:https://www.fom-association.jp/training-center/

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