近年、治験に占める国際共同治験がますます増えていく中で、CRCやCRAの方々が英語でのコミュニケーションを求められる場面も増えています。機械翻訳などの技術の発展が進む中でも、なにが正しく、かつ、場面に即した表現なのかを判断するには、やはり、個人の英語能力の上達は欠かせません。
前千葉大学医学部附属病院特任教授の藤居靖久先生のノウハウと弊社サン・フレアの知見を組み合わせ、実際に治験の現場で使われている表現を選りすぐって一冊の書籍にまとめています。医療現場で使われる様々な表現を記載していますので、医学英語の学習にもお役立ていただける一冊になっています。
CRC/CRA向け医学英語事例集、第2版発売中
2019年5月に第1版が発行した『ちけ文&ちけ単 治験に役立つ医学英文事例集 CRC&CRAとして国際共同治験に対応する』(金芳堂)が好評につき、第2版が2023年12月に発売になりました。第2版発行に伴い、内容の見直しを行い、新しいコンテンツも追加いたしました。
本書には英語の基本的な事項の説明から始まり、場面毎に短文英語の事例、用語解説、最後に長文課題の演習が収められています。臨床試験・治験で使われる表現が満載されていますので、学習したその場から活用いただける実践に役立つ治験英語の書き方を学習いただけます。
書籍の詳細はこちら
ちけ文&ちけ単 治験に役立つ医学英文事例集(第2版) - 株式会社 金芳堂 (kinpodo-pub.co.jp)
書籍発売の意図
国際共同試験に携わっておられるCRCの英語スキル向上のため、大学病院臨床試験アライアンスではメディカルライティングの向上に力を注がれてきた藤居先生のご経験を活かし、CRC の実務に直結した医学英語ライティング研修を実施されてきました。弊社株式会社サン・フレアは翻訳業務で培った、専門知識に基づいた経験ならびに翻訳者教育の技術や知識を元に、医学英語ライティング研修をサポートいたしました。
本書は医学英語ライティング研修を通じて蓄積した膨大な指導・添削内容を整理し、臨床試験・治験の業務に直結する内容を自然な流れで学習いただけるように工夫されています。特に第2章では、CRCの方に共通して見られた誤りなどを添削する形で示し、陥りやすい失敗やどう改善すればよいかをわかりやすく解説しています。臨床開発を進めるCRAの方にとっても有益な医学英語事例集となるよう工夫を加えています。
治験に役立つ学習コンテンツが満載
コンテンツ紹介:治験で使われる具体的な実例を取り上げていますので、すぐに使える医学英語事例や表現を学習することができます。
本書から第2章を用いて、コンテンツをすこしご紹介いたします。
日本語課題文に対して、よく見られる間違い英文の事例を示しています。間違い英文の添削を通じて、正しい表現を導くポイントを学習できます。また、重要な単語やフレーズを課題毎にまとめてあります。
治験開始、治験薬投与、AEなどの場面毎に学習内容を分けていますので、重点的に学習を進めたい医学英文の書き方を優先して習得できるようになっているのも魅力の一つです。
皆さまの学習の一助になれば幸いです。
本書の著者である藤居先生からのメッセージを次に紹介いたします。
著者からのメッセージ
日本では国際共同試験は 2007年から増え始め、PMDの報告によれば 2009年には113試験と増加しており、治験の中に占める国際共同治験の割合も20%を超えました。ただし、欧州系の製薬企業の団体であるEFPI日本支部の報告では、2008 年には既に5割を超え、国際共同治験は2009年には70%に達しています。このような状況下、EFPIAでは一外資系企業で開発部員のモニター教育をするのではなく、EFPIA加盟企業のモニターを一堂に会した集合教育研修が導入され、医学知識、メディカルライティングの講義が進められてきました。この集合研修を講師として担当していた著者に対して、製薬企業では国際共同治験のスキルを習得できる教育研修が充実しているが、国際共同治験を実施する医療機関のCRCにはこのような機会はなく、特に医学英語を学べる場が皆無であり、国際共同治験の質を高めるためにも、CRCを対象とした医学英語のライティングスキルの向上に向けた助力が得られないか大学病院臨床試験アライアンス事務局から要請を受けました。
本書は大学病院臨床試験アライアンスに加盟する8大学、9大学病院のCRCを対象に、安全性情報の経過や報告をEDCに英語で記載するためのライティングスキル向上を目的とした「CRC実務医学講座」で使用した課題を場面毎に短文英語の事例、用語解説、長文課題の演習に収めた治験に役立つ「臨床試験・治験」の医学英文事例集です。CRCのみにフォーカスされたものではなく、欧州の研究開発志向の製薬企業のモニターを対象としたメディカルライティング研修での成果も組み込み医学英文事例集として書籍に取りまとめました。まさにCRCやCRAが国際共同治験における医学英語事例を参考に活用できるようにまとめられた実践型の医学英文事例集です。
トップ医学ジャーナルである「The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE」誌からの医学英文事例を紹介していますので、生の医学英文表現を習得できるように工夫された、臨床開発推進者や医療機関で国際共同治験を最前線で実施されるCRCにフォーカスされた医学英文テキストです。
CRCやCRAの皆様にご活用いただき、質の高い国際共同治験がより多く実施されるよう祈念しています。
2023年12月 藤居 靖久
著者欄
藤居 靖久 様
臨床開発のモニタリング部門の責任者および各治療領域(循環器、呼吸器、皮膚、感染症、移植・免疫)の臨床開発経験を積む。2004年ノバルティスで初めての国際共同治験を実施するにあたり、グローバルとミラーの開発組織の立上げ、EDCの導入に参画した。その後、開発部員の教育・研修業務に携わると共に、監査部門と連携した教育システム、国際共同治験を担当するモニターの教育・認定システムを導入する。
欧州製薬団体連合会(EFPIA)の臨床部会副部会長、日本ACRPの立上に参画し、現在日本ACRP副理事長の職も兼務しながら日本の治験環境の改善活動に携わる。
千葉大学病院勤務後は臨床試験部のクリニカルオペレーション責任者として臨床研究、医師主導治験の立案、導入に参画する。
大学病院臨床試験アライアンスの研究支援スタッフ育成プロジェクトの講師として医学英語研修に参画する。
ご経歴:
1977年4月 日本チバガイギー株式会社(現:ノバルティスファーマ株式会社)入社
1997年4月 ノバルティスファーマ株式会社(チバ社とサンドの合併)臨床開発部RCM西日本責任者
2000年2月 臨床開発部 移植・炎症部門室長
2001年4月 開発本部 開発業務部研修室長
2004年5月 臨床開発部 呼吸器・皮膚・感染症・移植・免疫部門責任者
2006年12月 開発本部 開発教育研修部長
2007年11月 開発本部 開発業務・研修部長
2009年3月 開発本部 開発業務部長
2010年4月 千葉大学医学部附属病院特任講師
2013年4月 千葉大学医学部附属病院特任教授
2023年3月 千葉大学医学部付属病院退職
この記事を書いた人
MN
英国大学院に留学後、サン・フレアに入社。
入社後10年強は教育部門所属。本書籍作成を教育部門在籍時に対応。
現在は別部門にて様々な言語に関連する仕事に従事している。