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ゲームローカライズにおいて「AI翻訳」という言葉は、期待と不安の両方を伴って語られるようになりました。
翻訳コストの削減や多言語展開のスピード向上といったメリットが注目される一方で、ゲームローカライズにAI翻訳は本当に使えるのか、品質面で問題はないのか、といった疑問を持つ企業も少なくありません。
特に海外展開を前提とするゲーム会社にとって、翻訳品質はブランド価値やUXに直結する重要な要素です。
本記事では、AI翻訳の近年の精度向上を一般論として整理したうえで、ゲームローカライズでは実際にどのようにAI翻訳が使われているのかを解説します。
そのうえで、ゲームローカライズにおけるAI翻訳のメリットとリスクを俯瞰し、「AI翻訳はNGなのか?」という問いに対する現実的な判断軸を提示します。
近年のAI翻訳はどこまで進化しているのか
近年のAI翻訳は、従来の直訳中心の機械翻訳と比べ、大きく進化しています。ニューラル機械翻訳や生成AIの登場により、文脈をある程度考慮した自然な文章生成が可能になりました。
ビジネス文書やマニュアル、FAQといった分野では、すでにAI翻訳を前提とした運用を行う企業も珍しくありません。翻訳スピードの向上とコスト削減を同時に実現できる点は、多くの企業にとって魅力的です。
精度向上=すべての翻訳に適しているわけではない
ただし、AI翻訳の精度が向上したからといって、あらゆる翻訳にそのまま適用できるわけではありません。
AI翻訳は、情報をスピーディーに伝える用途では高い効果を発揮しますが、表現のニュアンスや感情の機微を重視するコンテンツでは課題が残ります。ゲームローカライズは、まさに後者に該当する分野です。

ゲームローカライズではAI翻訳は実際に使われているのか
「ゲームローカライズではAI翻訳は使われていない」と思われがちですが、実際にはそうではありません。多くのゲーム会社が、AI翻訳を翻訳工程の一部として活用しています。特に以下のような場面では、AI翻訳が有効に使われています。
・開発初期段階での仕様把握や仮翻訳
・大量テキストの一次翻訳・社内向け資料や確認用テキストの多言語化など
正式リリース用の翻訳では慎重な判断が求められる
一方で、海外向けに正式リリースされるゲームの翻訳を、AI翻訳の出力だけで完結させるケースは多くありません。これは、ゲームローカライズ特有の難しさが関係しています。
ゲームローカライズにおけるAI翻訳の難しさ
ゲームローカライズでは、単に意味が通じれば良いというわけではありません。プレイヤーが体験する物語や世界観、キャラクター性を正しく伝える必要があります。
世界観・キャラクター性・感情表現
キャラクターごとの口調や性格、物語全体のトーンは、ゲームの没入感を左右する重要な要素です。AI翻訳は文脈を一定程度考慮できるようになったとはいえ、こうした繊細な表現を安定して再現することはまだ得意とは言えません。
UI制約や分岐構造がもたらすリスク
さらに、ゲームローカライズには文字数制限やシナリオ分岐といった特性があります。
前後の文脈が不足した状態で翻訳されるテキストも多く、AI翻訳だけに任せると意図しない表現になるリスクが高まります。
ゲームローカライズでAI翻訳を使うメリット
それでもなお、ゲームローカライズでAI翻訳が注目されているのには理由があります。翻訳スピードの向上やコスト最適化は、海外展開を前提とするゲーム会社にとって大きな価値を持ちます。特に、多言語同時リリースやアップデート頻度の高いタイトルでは、初動を速められる点が強みになります。
これらのメリットについては、別記事で詳しく解説します。
AI翻訳に潜むリスク
一方で、AI翻訳には注意すべきリスクも存在します。最大の問題は、一見自然に見える翻訳ほど、誤りに気づきにくい点です。微妙なニュアンスのズレやキャラクター性の崩れは、プレイヤーの違和感として蓄積されます。
結果として、海外ユーザーからの評価低下やクレームにつながるケースも報告されています。

まとめ|AI翻訳は「NG」ではないが、使い方が重要
結論として、ゲームローカライズにおいてAI翻訳がNGというわけではありません。
しかし、用途や品質基準を明確にしないまま使うことは、大きなリスクを伴います。AI翻訳は、翻訳コストの削減やスピード向上に優れた非常に有効なテクノロジーです。一方で、最終的な品質を担保するには、ゲームの内容自体に対する理解や、ゲームローカライズに関する専門的な知見が欠かせません。AIの出力をそのまま使うのではなく、人の判断によるポストエディットや品質管理を組み合わせることで、スピードと品質を両立した翻訳体制を構築することが可能になります。これはAI翻訳を否定するものではありません。
AIというテクノロジーと、翻訳のプロフェッショナルが持つノウハウを組み合わせることで、海外展開を見据えたゲームビジネスの価値を、より高めることができるのです。
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サン・フレアでは、ゲームローカライズのナレッジを長年蓄積してきました。翻訳者の技術による翻訳だけではなく、AI翻訳と組み合わせたポストエディットサービスも提供しております。
また、AI翻訳を自社で導入されている企業様については、その出力精度を上げるための取組みに伴走させていただくことも可能です。最終的なゲームローカライズにおける品質担保には、専門的なナレッジを持つ翻訳会社を利用することをお勧めいたします。
